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潰瘍性大腸炎

UCとは??


潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis、UC)は主として腸の粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明の非特異性疾患といわれています。
他にも、腸の粘膜に炎症や潰瘍がある場合でも原因が明らかな特異的疾患もありますが、この非特異性疾患の代表的なものにクローン病や潰瘍性大腸炎が知られています。

ただ、クローン病と潰瘍性大腸炎は異なる症状もありますが似ている症状も多いため、クローン病と潰瘍性大腸炎の診断が難しい場合もあるようです。潰瘍性大腸炎の場合で、クローン病の可能性もあるので、中々改善されない場合は専門医にご相談ください。
潰瘍性大腸炎やクローン病は年々増加傾向で、これは食事の欧米化が要因の一つともいわれています。

潰瘍性大腸炎の症状
症状としては下痢、下血、血便や粘液便などの排便異常が主体で、他には腹痛、発熱などがあります。軽症の場合は血便などの症状が伴わないこともあります。病変の部位としては全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型などがあります。
特に全大腸炎型の場合は発がんリスクが高いことも知られていて注意が必要です。

潰瘍性大腸炎と免疫との関係
原因は、いまだに不明であるとされていますが、現在では遺伝的因子と環境因子が複雑に絡み合って、なんらかの抗原が腸に作用して、腸管に異常な免疫応答を引き起こすことによると考えられています。

潰瘍性大腸炎についての漢方


◎潰瘍性大腸炎は、自己免疫疾患とも呼ばれる慢性疾患の一つです。中医学では特に「脾 肺 腎」による影響が考えられます。漢方では免疫に関わる所として、まず腎があげられます。他に、この病気は大腸に限局していることから、大腸の表裏関係にある肺が関係しているとも考えます。漢方では大腸の機能などを管理しているのも肺になります。そして肺の母(=肺の親)としてあたるのが、脾とも考え脾(消化管)も重要になります。肺に症状がでている場合でも原因は脾にあるとも考えるためです。

腎は内分泌系や泌尿器生殖器系、免疫系などを含めたものと考えます。生長、発育・生殖および生命活動を維持する物質的な基礎になります。
免疫能に関していえば、腎陽と腎陰の両者が協調することにより維持される。
腎の機能が低下した状態の『腎虚(じんきょ)』と呼ばれ、免疫の低下や不調を来しやすくなります。

・肺は体温調節・免疫の一部なども含めたものと考えられます。
肺気の一部である衛気は汗の開閉などを行い、調整し維持する。また病邪が侵入するのを防止し、侵入した病邪に抵抗し、排除する役割があると考えられています。これは非特異的あるいは特異的な免疫能に相当します。

・脾とは、消化吸収機能や免疫維持機能を含めたものを考えます。
脾は「気」の生成に直接関与するので、気の充足状態は脾の機能によって決まることも多いです。なお、気の防御作用に関して脾が免疫能と密接な関係が明らかになっています。

病院でも腸管が最大の免疫器官ともいわれ、腸がクローズアップされてきています。
 下記腸内細菌学会 抜粋
 『腸管には、からだの中で最大の規模の免疫器官がある。腸には免疫器官として腸管壁にある腸の上皮細胞(吸収細胞)に囲まれて、腸管上皮間リンパ球が存在する。さらに腸管壁にはパイエル板、腸管壁の下方部分にある粘膜固有層などが免疫系器官として局在している。このうちでパイエル板は腸管壁に局在する独特でかつ重要な免疫器官である。』
このことからも、脾を鍛えることは免疫の強化にもなる場合があります。

漢方薬は?
潰瘍性大腸炎は繰り返すことが多いため、再燃させないように脾、肺、腎の強化を行い、体質改善をはかります。また、出血、下痢などに症状を和らげるものも使用します。

例として
・下血をとめる・・・槐角丸(かいかくがん)
・下痢を止める・・・人参湯(にんじんとう)など

●槐角丸
効能・効果
次の症状の緩和:内痔核、外痔核、裂肛、痔出血、痔の痛み、痔疾に伴う便秘
用法・用量
次の量を1日2回食間に水又は白湯で服用してください。
 年齢     1回の服用量     1日の服用回数
大人(15歳以上)           8丸       2回
15歳未満            服用しないでください。

●人参湯
効 能
体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすいものの次の諸症:胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎
用法・用量
次の量を1日3回食前又は食間に水又は白湯にて服用。
年 齢    1回量    1日服用回数
成人(15才以上)  1包    3回
15才未満7才以上  2/3包    3回
7才未満4才以上  1/2包    3回
4才未満2才以上  1/3包    3回
2才未満 服用しないこと

 日常生活においての養生として脂肪分の多いもの、特に自覚症状がひどい時は洋食のものを控えるようにする。甘いものとアルコール、辛いものはできるだけ避けるようにする。睡眠もできるだけ夜更かししないようにして、翌日にならないような時間に寝ることが重要です。理想としては10~11時くらいが理想的です。
下痢や消化器症状がひどい時は和食を心がけるほうがいいです。普段から脂っこくないものや和食の方がより理想的です。

石崎薬局
石崎 健一